【組織診断群】
全身のいずれかの臓器で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が陽性であり、かつ、既知の原因の肉芽腫および局所サルコイド反応を除外できているもの。
ただし、特徴的な検査所見および全身の臓器病変を十分検討することが必要である。
「日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌(日サ会誌)」(最終更新:2024年6月3日)
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症例から学ぶサルコイドーシス診療 | サルコイドーシスは病像が多彩で,診断や治療に難渋することが多い.症例報告をするほど珍しい症例でなくても,長期に多彩な経過をとった症例.油断をして増悪に気づくのが遅れた症例など,教科書からは学び難いような症例,特に初学者にとって示唆に富む症例や他の領域の会員に参考になるような症例,などを提示する. | 2ページ(3000字) |
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年度 | # | 種別 | 目次 | 頁 | 著者 |
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日本サルコイドーシス/肉芽種性疾患学会
サルコイドーシス診療の手引き 作成委員会
サルコイドーシスは原因不明の多臓器疾患である。若年と中年に好発し、両側肺門リンパ節、肺、皮膚の罹患頻度が高いが、肝、脾、リンパ節、唾液腺、心臓、神経系、筋肉、骨やその他の臓器が罹患することもある。診断は臨床像及び胸部X線所見に加えて、罹患部位から採取した組織標本に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が存在すれば確実となる。既知の原因による肉芽腫と局在性サルコイド反応は除外する。免疫学的には、しばしば、皮膚の遅延型過敏反応の抑制と、病変部位におけるCD4陽性T細胞/ CD8陽性T細胞比の増加がみられる。B細胞活性化を示唆する所見もときに認められ、 その1つとして血中免疫複合体を認めることもある。その他の検査所見として,血清アンギオテンシン変換酵素(S-ACE)活性の上昇、Gaの取込みの増加,Ca代謝の異常 ,蛍光血管造影所見の異常がある。Kveim-Silzbachテストは良質な検査液が使用できれば診断の一助となりうる。経過と予後は一般に発病様式と病変の拡がりに関与する 。結節性紅斑を伴う急性発症例や無症状の両側肺門リンパ節腫脹の例は,通常は自然経過で消退することが多いが,潜行性発病例,特に多臓器に肺外病変のある例は,慢性に進行することが多く,肺やその他の臓器の線維化に進展することもある。副腎皮質ホルモン剤は症状を改善させ,肉芽腫形成を抑制し,S-ACE値とGaの取込みを正常化する。
発生率には地域差があり,北に多く南に少ない。我が国の有病率は10万対1.7〜0.3 で平均0.7である。
原因は不明である。抗酸菌,α溶連菌,Propionibacterium acnesなどが原因として提唱されているが,いずれも確証は得られていない。
本症発見時約1/3は無症状である。霧視・羞明・飛紋・視力低下などの眼症状で発見される場合が最も多く,次いで皮疹,咳,全身倦怠が多い。その他,発熱,結節紅斑、関節痛などがある。
サルコイドーシスの診断基準による。眼サルコイドーシス及び心サルコイドーシスについては各々診断の手引きがある。 (後述)
原因が不明のため,肉芽腫抑制効果が認められるコルチコステロイド(以下ステロイド)も,その使用にあたっては賛否両論があることから,最小限にとどめるのが原則である。肺門及び縦隔リンパ節病変のみの症例はステロイド治療の対象とはならない。前眼部病変には,ステロイドの点眼・結膜下注射のほか,散瞳剤を併用する。ぶどう膜炎が激しく網膜・硝子体・視神経に著明な病変があり,局所療法に抵抗して改 善のみられない場合は,ステロイドの全身投与を併用する。心病変、中枢神経病変、 進行性難治症例及び自覚症状の強い症例にはステロイド投与が必要である。
本症の70%の症例は発病2年以内に自然寛解するが,残りの症例は長期間病変が残存し5〜10%の症例は,進行性の難治症例となる。
サルコイドーシスは以下の図1に従って診断されることを想定している。
サルコイドーシスは、自覚症状がなく検診で発見される病態から、多彩な各臓器症状や全身症状を呈する病態まで幅広い臨床症状を呈することが知られている。しかし、本邦では、呼吸器科、眼科、循環器科領域の症状を訴えることが多いので、上記臓器のいずれかの当該臓器の各種検査で、臓器病変を強く示唆する臨床所見を確認することにより、サルコイドーシスに特徴的な検査を実施し、診断する場合がある。また、上記以外の臓器病変の異常を認め、生検等で組織学的に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が証明されたことにより、サルコイドーシスを考え、全身検索と特徴的な検査の実施によりサルコイドーシスが診断される場合がある。 どちらの場合もできる限り組織診断を加え、十分に除外診断を行うことが重要である。
サルコイドーシスの診断は組織診断群と臨床診断群に分け下記の基準に従って診断する.
全身のいずれかの臓器で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が陽性であり、かつ、既知の原因の肉芽腫および局所サルコイド反応を除外できているもの。
ただし、特徴的な検査所見および全身の臓器病変を十分検討することが必要である。
類上皮細胞肉芽腫病変は証明されていないが、 呼吸器、眼、心臓の3臓器中の2臓器以上において本症を強く示唆する臨床所見を認め、かつ、特徴的検査所見の5項目中2項目以上が陽性のもの。
特徴的な検査所見5項目中2項目以上陽性の場合に陽性とする。
呼吸器系、眼、心臓、皮膚およびそれ以外の臓器におけるサルコイドーシスに特徴的な臨床所見およびサルコイドーシスの関連病態に伴う臓器病変を以下に示す。
サルコイドーシスの診断には基本的に組織学的診断が必要であるが、呼吸器系病変、眼病変および心臓病変に関しては組織学的証明がない場合でも、臓器別のサルコイドーシスを強く示唆する臨床所見の基準を満たせば、“臓器病変あり”とみなす。
呼吸器系病変は肺胞領域の病変(胞隔炎)および気管支血管周囲の病変、肺門および縦隔リンパ節病変、気管・気管支内の病変、胸膜病変を含む。
1) または2)がある場合、呼吸器系病変を強く示唆する臨床所見とする。
下記眼所見の 6項目中2項目をみたしたものを,眼病変を強く示唆する臨床所見とする.
参考となる眼病変:角膜乾燥症、上強膜炎・強膜炎、涙腺腫脹、眼瞼腫脹、顔面神経麻痺
心臓所見(徴候)は主徴候と副徴候に分けられ、以下の1)または2)のいずれかを満たす場合、心臓病変を強く示唆する臨床所見とする。
サルコイドーシスの皮膚病変はすべて組織学的診断で診断可能なため,すべて組織診断陽性のものをいう.以下表5に皮膚の臨牀所見を示す.
呼吸器系、眼、心臓、皮膚以外の臓器におけるサルコイドーシスを強く示唆する臨床所見にはCT、MRI、超音波、各種内視鏡、gallium-67 citrateシンチグラムやfluorine-18 fluorodeoxygluose PETなどの画像所見が含まれる。呼吸器系、眼、心臓、皮膚以外の臓器においてサルコイドーシスを強く示唆する臨床所見を確定する際は、全身のいずれかの臓器において類上皮細胞肉芽腫の証明を必要とする。
サルコイドーシスでは、以下のような関連病態(およびそれに伴う臓器病変)を呈しうる。これらの関連病態は “臓器病変を強く示唆する臨床所見”とはならないが、サルコイドーシスに伴う所見として重要であるため、ここに記載する。
以下の除外規定に従って、十分に鑑別診断を行う。
サルコイドーシスは同時性および異時性に多臓器に病変を有する全身性疾患であるので、既往歴の確認を十分に行い、各種臓器病変の有無を経時的に検討する必要がある。また、サルコイドーシスとして各臓器の診断の手引きから典型的な症例で組織学的な検討が困難な場合でも臨床診断群として、申請し、治療ができるようにした。この場合も十分に鑑別診断を行うことが前提である。また、サルコイドーシスを疑うが、上記の基準を満たさない症例において治療の必要がない場合には、疑診として経過観察を行うこととする。一方、疑診でも心臓サルコイドーシスや中枢神経サルコイドーシスを強く疑い、生命の危険が想定される場合は治療的診断として、診断に先行して治療を行う場合があることを付記する。
四十坊典晴、山口哲生、吾妻安良太、宮崎英士、長井苑子、鈴木栄一、森本紳一郎、石原麻美、岡本祐之、西山和利、杉山幸比古、工藤翔二、西村正治、本間栄
吾妻安良太、井上義一、鈴木栄一、本間栄、長井苑子、山口哲生、杉山幸比古
森本紳一郎、寺﨑文生、磯部光章
石原麻美、後藤浩
岡本祐之、伊崎誠一
西山和利
次の3項目によるスコアで判定する。
印刷用はこちらの《サルコイドーシス治療に関する見解-2003》PDFファイルをご利用ください
編集
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会,日本呼吸器学会,日本心臓病学会,日本眼科学会,厚生省科学研究─特定疾患対策事業─びまん性肺疾患研究班
『サルコイドーシス治療に関する見解-2003』は日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会が中心となりつつ,全身諸臓器が関連するというこの疾患の特徴を踏まえて関連諸学会と厚生省びまん性肺疾患調査研究班が連携して作成したものである.この文書が「ガイドライン」と言う言葉を使用しなかった理由として,この疾患が原因不明であること,一般に自覚症状に乏しく発病の推定が困難であること,自然治癒が高率に認められることなどより世界的にみても確立された治療方法がないことがあげられる.例えば,真にステロイド剤の使用が必要と考えられる重篤な肺外病変や胸部レ線分類のstage II〜stage IIIの肺病変をもつ症例においても,個々の症例を解析するとその臨床症状,検査結果や重症度が一定の尺度では明確に分類することが難しく,十分な観察期間をおいてステロイド治療の適応を判定しなくてはならない症例などが含まれてくる.国内外の治療に関する報告をみても,治療適応に関する限り多くの関係者が認める適応の決定基準は見出されていない.その為に共通の適応基準に基づいた二重盲検試験のエビデンスがないのが現状である.但しstage I〜stage IIの軽症例ではステロイド剤による治療の必要がないことが一般的に認められたと考えてよい.このような背景において,本見解は我が国でサルコイドーシスの診療に携わっている多数の医師からのアンケート調査をもとに,現在実際に行われているステロイド治療のスタンダードを臓器別特徴も踏まえてまとめたものである.以上のことから理解されるように,この見解が唯一の治療法ではなく個々の症例の詳細な検討に基づいて独自の治療法が行われるのは当然であると考えられる.また難治症例に対する免疫抑制剤などの適応と使用法などは本見解では不十分なままで残されており今後改訂を重ねて,変更と追加を行っていく予定である.
2003.3.31
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
サルコイドーシス治療ガイドライン策定委員会
委員長 津田富康
サルコイドーシスは原因不明の肉芽腫(類上皮細胞肉芽腫)性疾患で,多くは全身の多臓器(眼,皮膚,肺,心臓,肝,腎,リンパ節,神経 筋等)に出現し,一部はその臓器を障害する.原因が明らかにされていない現時点では根治治療は望めないが,疾病の病態が遅延型アレルギーに基づく反応(Th1 系免疫反応)であることが多くの報告から推定されている.実際,ステロイドホルモン剤(以後ステロイド剤とする)を使用した場合,短期的な改善効果は約60 〜80%であり(表1)1),症状の軽快,画像所見の改善(胸部X線,67Ga-uptake),血液所見(ACE,lysozyme高値)の正常化などが認められる.一方,サルコイドーシス症例の多くは自然治癒(28-70%)2)-5)することも認められており,このような場合多くは2年以内3)-5)に病変が消失する.そこで,治療方針を決定するに当たっては,治療適応の判定が問題になる.また,ステロイド剤の治療に反応し改善(60%前後)6)7)した症例の再発率も高率(16〜74%)8)-11)である.また,我が国のサルコイドーシス患者はアフリカ系アメリカ人やインド人などの患者に比較し軽症例が多いという特徴があり,我が国に適した治療法の確立が望まれていた.
今回は日本サルコイドーシス/ 肉芽腫性疾患学会と厚生科学研究特定疾患対策研究事業びまん性肺疾患研究班の共同研究として,新しい「サルコイドーシス治療に関するガイドライン策定委員会」を1997年に設け,サルコイドーシス治療ガイドラインの検討を重ねてきた.期を同じくして1999 年にATS,ERS,WASOG の共同によるStatement onSarcoidosis 12)が発表されたが,その中の治療の項でも示されているように,サルコイドーシスに対するステロイド剤の治療適応に関して意見の統一が出来ていないのが現状である.そこで今回は,1982年厚生省特定疾患肉芽腫性肺疾患調査研究班作成の表題「サルコイドーシスの改訂治療指針」13)を改訂前の「サルコイドーシスの治療に関する見解」に戻し2003を付けて標題とした.この見解は以上から判るように確定的なものではなく,治療に際しての目安となるもので,あくまで個々の症例の十分な観察を通じて各症例に適した治療を行うことが望まれる.
日本では1972 年に厚生省特定疾患サルコイドーシス調査研究班(班長:本間日臣)でステロイド治療二重盲検試験14)が実施され,stage I 症例を含むプレドニゾロン群同じになり,ステロイドの治療効果は確定的ではなかった.またIzumiは若年で肺外病変がなく,胸郭内病変がstage Iで自覚症状のない症例に対するステロイド剤の治療は,治療を受けなかった症例に比較して胸部異常陰影の改善率が有意に不良であったと報告している15).泉らはさらに発症 発見後10 年以上の胸部X 線所見の経過を追跡した自験例337 名の成績をまとめ,10 年目の肺野病変残存は有症状発見群,無症状群いずれにおいても,ステロイド剤投与を受けた人に多いという結果を示している16).このような結果より日本では肺病変に対するステロイド剤の投与は慎重に行われている.一方欧米のプラセボを使った肺サルコイドーシスの治療経験ではJames ら (84名で6ヵ月の治療)6),Israel ら (83 名で3ヵ月の治療,5.2 年の観察)17),Eule ら(206名で6ヶ月,12ヶ月の治療,5年の観察)18)による検討から,stage I, IIの症例は短期的にはプラセボ群に比し改善が認められているが,長期の観察では両群に有意差は認められなかったとして,日本での治療結果と同様の成績を示している.またHunninghake ら(98 名で1 年の治療)5),Gibson ら(149 名で5 年の観察)19) は,対象を限定してステロイド剤の投与を行えば有用性が高いとしているが,Gottlieb ら(337名で4年の観察)10) は長期的にみた場合ステロイド剤治療群のほうが自然緩解群よりも再発率が高かったとして,自然治癒をステロイド治療が遷延させる可能性とステロイド導入の必要な症例ではステロイド剤からの離脱が難しい可能性を指摘している. 一般に,ステロイド剤全身投与の適応は心病変12-23),24),神経病変12)25)26),局所治療抵抗性の眼病変12)27),高Ca血症を認める症例12)28)で,肺では広範な病変があり,自覚症状のある症例が適応であると考えられている12)13).しかし,このような症例に対する二重盲験試験はない.また,投与後の長期予後の検討はあまり行われていない. 欧米ではステロイド抵抗性の症例にはメトトレキサート,アザチオプリン,シクロホスファミド,ヒドロキシクロロキンなどの細胞毒性薬が使用されているが29)-34),使用法とその適応は明確ではない.日本においても使用経験は非常に少なく,今後症例の積み重ねが必要と思われる. 以上の結果を踏まえて,この新治療見解の目的を今後の日本の治療ガイドライン作成の第一歩と位置づけて,現時点での内外の報告のまとめとした.
サルコイドーシスに対しては従来ステロイド剤が使用されてきた.近年,本剤の作用機序33)はグルココルチコイドが細胞内のグルココルチコイド受容体と結合し核内に入りIL-1, IL-2, IL-3, IL-4, IL-5, IL-6 などのサイトカインの遺伝子転写を抑制するためであることが知られるようになった.治療薬としての効果は,そのような作用が遅延型アレルギーによって起こるサルコイドーシスの肉芽腫反応を抑制することによると考えられる.事実,組織生検をステロイド剤の投与の前後で行った報告では,病理所見の改善が確認されている36).しかし原因療法ではないことも事実で,再燃が多いこともこのためと考えられる.ステロイド剤の投与方法は全身投与と局所投与がある.呼吸器領域では吸入性ステロイド剤(budesonide)の使用報告12)37)38)もある.眼科領域では前眼部病変には原則的に点眼が使用されている.また,全身投与の場合,中枢神経病変や心病変などでは高用量の使用もなされることがある30)31).
ステロイド剤の使用後に再燃した場合や十分な効果がステロイド剤の単独使用では認められない時にどのように対処するかが問題となる.以下に示す薬剤が少数例ではあるが日本では単独ないし,ステロイド剤との併用で使用されている.しかし日本での使用経験が乏しい現状では明確な使用方法の記載は出来ない.そこで現在使用されている主な3薬剤について概略を記載するにとどめる
薬理作用は葉酸からその活性型citrovorum factor への転化を阻害し,核酸基礎成分の合成を阻害する.重篤な本剤過敏症,肝障害,腎障害,催奇形性,骨髄障害,消化器障害等の可能性があるので使用に際しては十分な医師の監督下での投与が適切と考えられる.妊婦への投与は禁忌である.投与方法は単独またはステロイド剤との併用が行われている.投与量は7.5mg/週39),10〜25mg/週12)29)が報告されている.投与期間には一定のものはないが,Suda らは6カ月の使用後,漸減している39).最近のBaughmanら33)の報告では,2年まで使用可能でありそれ以降は肝生検をして投与持続について考慮する必要があるとしている.
薬理作用は生体内で6-メルカプトプリン(6MP)に分解された後,主にヌクレオチドのチオイノシン酸となり,これがプリン代謝の過程においてイノシン酸と拮抗して核酸合成を抑制し,リンパ球の増殖を阻止し免疫抑制作用をしめす.副作用は白血球減少,食欲不振,嘔気,肝障害,皮疹,脱毛,心悸亢進などである.投与方法は単独またはステロイド剤との併用が行われている.投与量は文献では50〜200mg/日12)29)である.血液検査を十分に行い,白血球数が持続的または急速に低下した場合は減量または中止する.
薬理作用は生体内でnitrogen mustard が遊離して細胞毒性を示す.副作用としては骨髄障害,腎障害,出血性膀胱炎,肝障害,過敏症,消化器症状,発癌性等がある.使用量は経口で50〜150mg/日,静注で500〜2000mg/2週と報告12)29)されている. そ の 他 ク ロ ロ キ ン や ヒ ド ロ キ シ ク ロ ロ キ ン(hydroxychloroquine)などが報告30)40)されているが今回は省略する.表2はStatement on Sarcoidosis 12) に記載されたもので,参考に示す.
サルコイドーシスは臨床的に多様性に富んだ病像と経過を示す.そのために治療にあたっては下記の病像を考慮し治療適応を決めることが有用と考えられる.
治療前に認められた自覚症状,画像所見,検査所見,臓器障害の改善または安定化が認められ,維持量(プレドニゾロン5-10mg/日)に減量後3〜6カ月の経過観察で再燃が認められない時は終了してもよいが再発もありうる.また重大な有害事象が出現した場合は速やかに減量し中止する.ステロイド剤の減量に際し,一般にプレドニゾロン15mg/ 日になった時期は再燃が多いので特に注意して減量することが望ましい11)
肺サルコイドーシスにおいては,自覚症状,呼吸機能障害,画像所見の悪化について判断し,これらが無いか軽度の場合には原則として経口ステロイド剤は投与しない.血清Angiotensin Converting Enzyme(ACE) 活性,67Ga シンチグラム所見,気管支肺胞洗浄液所見はステロイド剤投与開始の直接の指標にはならない.
経口ステロイド剤に対して効果が少ないかまたは減量時 に悪化,再燃を繰り返す症例においては,他の免疫抑制剤 (methotrexate,azathioprine,cyclosporine A , cyclophosphamide,Chlorambucil など)の単独またはステ ロイド剤との併用投与を考慮する.
サルコイドーシスの死因の3分の2以上は,本症の心病変 (心臓サルコイドーシス)による.従って心病変の存在はサ ルコイドーシスの予後を左右する要因と考えられている. 一般に早期の心病変にはステロイド剤が有効である.そこ で心臓サルコイドーシスの診断がなされた場合には,ステ ロイド剤治療を行う.なお各種病態に応じて一般的治療も 並行して行う必要がある.
注1) 高度房室ブロックおよび完全房室ブロックでは, ステロイド剤を投与するとともに,恒久的ペース メーカの植込みを考慮する.
注2) 心室期外収縮,心室頻拍がステロイド剤治療によ り全て消失することは稀であり,抗不整脈薬の併 用を試みる.これらの治療にもかかわらず,持続 性心室頻拍などが認められる場合には,植込み型 除細動器やカテーテルアブレーションの適応となる.
注3) β 遮断薬は左室収縮機能不全に有用であるが,心 不全や伝導障害を悪化させることがあるので慎重 に用いる.
注4) ステロイド剤の重大な副作用で継続投与が困難な 場合には,メトトレキサート5〜7.5mg/週の投与も 試みられている.しかし心病変に対する本剤の使 用経験は少なく,その有用性も十分には明らかに されていない.
(ステロイド剤治療を行わない場合は,一般的に収縮能 は次第に悪化する.)
原則としてステロイド剤局所投与(眼球周囲注射を含む)と散瞳薬で治療する.2に述べる病変にはステロイド剤の全身投与を行う.
以下のような活動性病変があり,視機能障害のおそれのある場合.
減量は病勢をみて慎重に行う.投与終了にあたっては,活動性眼病変の沈静化とともに,全身検査データに留意する
ステロイド剤の副作用に注意する.ステロイド剤に抵抗 し,長期投与が必要な難治例がある.ステロイド剤以外の 免疫抑制剤およびその併用療法,硝子体手術の有効性につ いては,現在一定の評価がない.種々の眼合併症について は適切な治療を行う.
サルコイドーシスの治療に関する見解-2003では,現在我 が国で治療に携わっている医師(主に日本サルコイドーシ ス/ 肉芽腫性疾患学会の会員)に治療症例のケースカード (166例の治療症例/1600症例の全サルコイドーシス症例)の 提出を依頼すると共にサルコイドーシス治療に関する基本 的考え方のアンケート調査を行った.また,その結果出来 上がった主要臓器(肺,心,眼)に関する治療見解(草案) は日本呼吸器学会,日本心臓病学会,日本眼科学会にお願 いして各学会内にサルコイドーシス治療ガイドライン策定 専門部会(呼吸器部会,心臓部会,眼科部会)を設立する ように依頼し,専門的立場より草案の検討をして頂いた後 に,最終的にサルコイドーシス治療に関する見解-2003が作 成された.各種委員会の委員については後に一括して示す.