日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
V.治療指針(1994年一部改正

 原因が不明のため、肉芽腫抑制効果が認められるコルチコステロイド(以後ステロ イド)も、その使用にあたっては賛否両論があることから、最小限にとどめるのが原 則である。
 サルコイドーシスの70%の症例は発病2年以内に自然寛解するが、残りの症例は長 期間病変が残存し、5〜10%の症例は、進行性の難治症例となる。発病時どのような 所見を呈する症例が、その後に難治症例となるかは、現在なお明らかでないが、これ らの進行性難治症例及び自覚症状の強い症例にはステロイド投与が必要である。



1 治療の適応

(1) 胸部内病変
肺門及び縦隔リンパ節病変のみの症例はステロイド治療の対象ではない。しかし、 咳、息切れ、喘息様症状などがある場合(稀に狭窄)、治療の適応となる。胸部X線 上広範な肺野病変があり、息切れ又は持続性の咳が認められる場合にはステロイド治 療を行う。肺野病変があっても上記の自覚症状のないときは治療の必要はないが、明 らかな呼吸機能低下又は低酸素血症を伴うとき、及び、六ヶ月以上視察し悪化が認め られたとき(呼吸機能、SACE、67Gaシンチ、肺胞洗浄液等を参考)にはステロイドを 使用することがある。既に線維化が進行していて、改善がみられないときは、比較的 急速に減量し、最小有効量を持続するか、免疫抑制剤を併用することもある。
(2) 眼病変
前眼部病変には、ステロイドの点眼・結膜下注射のほか、散瞳剤を併用する。ぶど う膜炎が激しく網膜・硝子体・視神経に著明な病変があり、局所療法に抵抗して改善 のみられない場合は、ステロイドの全身投与を併用する。この際改善がみられれば経 過を視察して 減量し局所療法に切り替える。初期ぶどう膜炎に伴う眼圧上昇は一時的なものが多く 、また薬物的にコントロールしやすいが、不幸にして改善がみられないと判断された 場合は、 ぶどう膜炎の鎮静を待って、手術を施行することもある。

(3) 心病変
本症の死因の3分の2以上は、心臓サルコイドーシスである。心病変の特に早期の症 例にはステロイドが有効である。経過中に房室ブロック、脚ブロックなどの刺激伝導 障害、あるいは危険な心室性期外収縮(多原性・連拍性・R on T 現象)・心室頻拍 ないし細動など刺激生成異常が出現した場合は、ステロイド治療を行う。また症例に より、心臓ペースメーカーの植え込み、抗不整脈剤の使用など、他の治療を、併用す ることが大切である。 一方、ステロイド剤で、心筋線維化による心室瘤形成が促進されるとの報告もあるの で、投与中は注意が必要である。

(4) 神経系病変
中枢神経病変も死因や日常生活障害との関連があり、ステロイド治療の適応である。 末梢神経病変は一般に自然寛解が多いが、多発性末梢神経症状にはステロイド治療 を行うこともある。
(5) 皮膚病変
原則としてステロイド治療を必要としない。しかし、顔面などに発疹がみられ、美 容上 必要な場合にはステロイド剤を内服させる。結節性紅斑で関節痛を伴う場合に は非ステロイド性抗炎症剤を内服させるか、ステロイド剤を内服させる。広範で難 治性の場合は内服以外に局所皮下注射を行う。
(6) その他のサルコイド病変
現在の所一定の見解はないが、症状を伴う高度の顕在性病変にはステロイド療法 を行う。


2 ステロイドの投与方法

 ステロイドの投与法は症例により異なり、一律には決め難いが、我が国で多く用い られているのは以下の通りである。
 初回投与量はプレドニゾロン1日30mg相当で始め、1ヶ月以上持続する。軽快傾向 がみられたら、約1ヶ月ごとに5mg/日ずつ減量し、1日15mgを3〜6ヶ月持続する。以 後は自覚症状、胸部x線所見、肺機能、SACE、心電図などを参考にしながら6ヶ月かけ て減量中止をする。減量中は1日15mg前後の時期に再悪化することが多い。再悪化が みられたら、増量するが、減量時には慎重でなければならない全投与期間は1年6ヶ月 以上になることが多く、症例によってはほとんどが一生に及ぶ例もある。初回投与量 を60mgとし、隔日投与することもあるが、この場合内服の compliance に注意を要す る。ステロイドが無効のときは急速に減量するが、このとき免疫抑制剤を投与するこ ともある。最近、P.acnes説もあるので抗生物質の併用も試みられている。


3 療養指導
  両側肺門リンパ節腫脹のみの場合は、学業や仕事は持続させてよい。
ただし、激しいスポーツなどは避けた方がよい。眼病変のある場合は、長時間の テレビ、ファミコン、夜間ドライブを禁ずる。
  中絶、分娩後は悪化することが多いので、1ヶ月おきに6ヶ月間は精査(特に眼 )が必要である。