日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会

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サルコイドーシス治療に関する見解-2003

編集
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会,日本呼吸器学会,日本心臓病学会,日本眼科学会,厚生省科学研究─特定疾患対策事業─びまん性肺疾患研究班

目 次

  • 序文 . . . . . . . . サルコイドーシス治療ガイドライン策定委員会委員長 津田富康
  • 総論
  • I. 緒言 . . . . . . . . 1
  • II. 日本におけるサルコイドーシスの治療経験と国際比較 . . . . . . . .1
  • III. サルコイドーシスの治療薬 . . . . . . . . 2
  • 1. ステロイド剤
  • 2. ステロイド剤以外の薬剤
  • 1) メトトレキサート(methotrexate)
  • 2) アザチオプリン(azathioprine)
  • 3) シクロホスファミド(cyclophosphamide)
  • IV. サルコイドーシスの臨床経過と基本的な治療適応の関係 . . . . . . . . 3
  • V. 治療終了 中止の判定 . . . . . . . . 3
  • 各論
  • I. 肺サルコイドーシスの治療 . . . . . . . . 5
  • 1. 治療方針
  • 2. ステロイド剤全身投与の適応
  • 3. 一般的な投与法
  • 4. その他の薬剤
  • II. 心臓サルコイドーシス . . . . . . . . 6
  • 1. 治療方針
  • 2. ステロイド剤全身投与の適応
  • 3. 一般的な投与法
  • 4. ステロイド剤の効能
  • 5. 注意事項
  • III. 眼サルコイドーシスの治療 . . . . . . . . 8
  • 1. 治療方針
  • 2. ステロイド剤全身投与の適応
  • 3. 一般的な投与法
  • 4. 治療効果の判定
  • 5. その他
  • IV. 心臓,眼以外の肺外サルコイドーシスの治療 . . . . . . . . 10
  • 1. ステロイド剤全身投与の適応
  • 2. 一般的な投与法
  • 3. その他
  • 改訂までの作業手順 . . . . . . . . 11
  • 委員会の構成 . . . . . . . . 11
  • 文献 . . . . . . . . 13

序文

 『サルコイドーシス治療に関する見解-2003』は日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会が中心となりつつ,全身諸臓器が関連するというこの疾患の特徴を踏まえて関連諸学会と厚生省びまん性肺疾患調査研究班が連携して作成したものである.この文書が「ガイドライン」と言う言葉を使用しなかった理由として,この疾患が原因不明であること,一般に自覚症状に乏しく発病の推定が困難であること,自然治癒が高率に認められることなどより世界的にみても確立された治療方法がないことがあげられる.例えば,真にステロイド剤の使用が必要と考えられる重篤な肺外病変や胸部レ線分類のstage II〜stage IIIの肺病変をもつ症例においても,個々の症例を解析するとその臨床症状,検査結果や重症度が一定の尺度では明確に分類することが難しく,十分な観察期間をおいてステロイド治療の適応を判定しなくてはならない症例などが含まれてくる.国内外の治療に関する報告をみても,治療適応に関する限り多くの関係者が認める適応の決定基準は見出されていない.その為に共通の適応基準に基づいた二重盲検試験のエビデンスがないのが現状である.但しstage I〜stage IIの軽症例ではステロイド剤による治療の必要がないことが一般的に認められたと考えてよい.このような背景において,本見解は我が国でサルコイドーシスの診療に携わっている多数の医師からのアンケート調査をもとに,現在実際に行われているステロイド治療のスタンダードを臓器別特徴も踏まえてまとめたものである.以上のことから理解されるように,この見解が唯一の治療法ではなく個々の症例の詳細な検討に基づいて独自の治療法が行われるのは当然であると考えられる.また難治症例に対する免疫抑制剤などの適応と使用法などは本見解では不十分なままで残されており今後改訂を重ねて,変更と追加を行っていく予定である.

2003.3.31
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
サルコイドーシス治療ガイドライン策定委員会
委員長 津田富康

総論

I. 緒言

 サルコイドーシスは原因不明の肉芽腫(類上皮細胞肉芽腫)性疾患で,多くは全身の多臓器(眼,皮膚,肺,心臓,肝,腎,リンパ節,神経 筋等)に出現し,一部はその臓器を障害する.原因が明らかにされていない現時点では根治治療は望めないが,疾病の病態が遅延型アレルギーに基づく反応(Th1 系免疫反応)であることが多くの報告から推定されている.実際,ステロイドホルモン剤(以後ステロイド剤とする)を使用した場合,短期的な改善効果は約60 〜80%であり(表1)1),症状の軽快,画像所見の改善(胸部X線,67Ga-uptake),血液所見(ACE,lysozyme高値)の正常化などが認められる.一方,サルコイドーシス症例の多くは自然治癒(28-70%)2)-5)することも認められており,このような場合多くは2年以内3)-5)に病変が消失する.そこで,治療方針を決定するに当たっては,治療適応の判定が問題になる.また,ステロイド剤の治療に反応し改善(60%前後)6)7)した症例の再発率も高率(16〜74%)8)-11)である.また,我が国のサルコイドーシス患者はアフリカ系アメリカ人やインド人などの患者に比較し軽症例が多いという特徴があり,我が国に適した治療法の確立が望まれていた.

 今回は日本サルコイドーシス/ 肉芽腫性疾患学会と厚生科学研究特定疾患対策研究事業びまん性肺疾患研究班の共同研究として,新しい「サルコイドーシス治療に関するガイドライン策定委員会」を1997年に設け,サルコイドーシス治療ガイドラインの検討を重ねてきた.期を同じくして1999 年にATS,ERS,WASOG の共同によるStatement onSarcoidosis 12)が発表されたが,その中の治療の項でも示されているように,サルコイドーシスに対するステロイド剤の治療適応に関して意見の統一が出来ていないのが現状である.そこで今回は,1982年厚生省特定疾患肉芽腫性肺疾患調査研究班作成の表題「サルコイドーシスの改訂治療指針」13)を改訂前の「サルコイドーシスの治療に関する見解」に戻し2003を付けて標題とした.この見解は以上から判るように確定的なものではなく,治療に際しての目安となるもので,あくまで個々の症例の十分な観察を通じて各症例に適した治療を行うことが望まれる.

II. 日本におけるサルコイドーシスの治療経験と国際比較

 日本では1972 年に厚生省特定疾患サルコイドーシス調査研究班(班長:本間日臣)でステロイド治療二重盲検試験14)が実施され,stage I 症例を含むプレドニゾロン群同じになり,ステロイドの治療効果は確定的ではなかった.またIzumiは若年で肺外病変がなく,胸郭内病変がstage Iで自覚症状のない症例に対するステロイド剤の治療は,治療を受けなかった症例に比較して胸部異常陰影の改善率が有意に不良であったと報告している15).泉らはさらに発症 発見後10 年以上の胸部X 線所見の経過を追跡した自験例337 名の成績をまとめ,10 年目の肺野病変残存は有症状発見群,無症状群いずれにおいても,ステロイド剤投与を受けた人に多いという結果を示している16).このような結果より日本では肺病変に対するステロイド剤の投与は慎重に行われている.一方欧米のプラセボを使った肺サルコイドーシスの治療経験ではJames ら (84名で6ヵ月の治療)6),Israel ら (83 名で3ヵ月の治療,5.2 年の観察)17),Eule ら(206名で6ヶ月,12ヶ月の治療,5年の観察)18)による検討から,stage I, IIの症例は短期的にはプラセボ群に比し改善が認められているが,長期の観察では両群に有意差は認められなかったとして,日本での治療結果と同様の成績を示している.またHunninghake ら(98 名で1 年の治療)5),Gibson ら(149 名で5 年の観察)19) は,対象を限定してステロイド剤の投与を行えば有用性が高いとしているが,Gottlieb ら(337名で4年の観察)10) は長期的にみた場合ステロイド剤治療群のほうが自然緩解群よりも再発率が高かったとして,自然治癒をステロイド治療が遷延させる可能性とステロイド導入の必要な症例ではステロイド剤からの離脱が難しい可能性を指摘している. 一般に,ステロイド剤全身投与の適応は心病変12-23),24),神経病変12)25)26),局所治療抵抗性の眼病変12)27),高Ca血症を認める症例12)28)で,肺では広範な病変があり,自覚症状のある症例が適応であると考えられている12)13).しかし,このような症例に対する二重盲験試験はない.また,投与後の長期予後の検討はあまり行われていない. 欧米ではステロイド抵抗性の症例にはメトトレキサート,アザチオプリン,シクロホスファミド,ヒドロキシクロロキンなどの細胞毒性薬が使用されているが29)-34),使用法とその適応は明確ではない.日本においても使用経験は非常に少なく,今後症例の積み重ねが必要と思われる. 以上の結果を踏まえて,この新治療見解の目的を今後の日本の治療ガイドライン作成の第一歩と位置づけて,現時点での内外の報告のまとめとした.

III. サルコイドーシスの治療薬

1. ステロイド剤

 サルコイドーシスに対しては従来ステロイド剤が使用されてきた.近年,本剤の作用機序33)はグルココルチコイドが細胞内のグルココルチコイド受容体と結合し核内に入りIL-1, IL-2, IL-3, IL-4, IL-5, IL-6 などのサイトカインの遺伝子転写を抑制するためであることが知られるようになった.治療薬としての効果は,そのような作用が遅延型アレルギーによって起こるサルコイドーシスの肉芽腫反応を抑制することによると考えられる.事実,組織生検をステロイド剤の投与の前後で行った報告では,病理所見の改善が確認されている36).しかし原因療法ではないことも事実で,再燃が多いこともこのためと考えられる.ステロイド剤の投与方法は全身投与と局所投与がある.呼吸器領域では吸入性ステロイド剤(budesonide)の使用報告12)37)38)もある.眼科領域では前眼部病変には原則的に点眼が使用されている.また,全身投与の場合,中枢神経病変や心病変などでは高用量の使用もなされることがある30)31)

2. ステロイド剤以外の薬剤

 ステロイド剤の使用後に再燃した場合や十分な効果がステロイド剤の単独使用では認められない時にどのように対処するかが問題となる.以下に示す薬剤が少数例ではあるが日本では単独ないし,ステロイド剤との併用で使用されている.しかし日本での使用経験が乏しい現状では明確な使用方法の記載は出来ない.そこで現在使用されている主な3薬剤について概略を記載するにとどめる.
1) メトトレキサート(methotrexate)
 薬理作用は葉酸からその活性型citrovorum factor への転化を阻害し,核酸基礎成分の合成を阻害する.重篤な本剤過敏症,肝障害,腎障害,催奇形性,骨髄障害,消化器障害等の可能性があるので使用に際しては十分な医師の監督下での投与が適切と考えられる.妊婦への投与は禁忌である.投与方法は単独またはステロイド剤との併用が行われている.投与量は7.5mg/週39),10〜25mg/週12)29)が報告されている.投与期間には一定のものはないが,Suda らは6カ月の使用後,漸減している39).最近のBaughmanら33)の報告では,2年まで使用可能でありそれ以降は肝生検をして投与持続について考慮する必要があるとしている.
2) アザチオプリン(azathioprine) 
薬理作用は生体内で6-メルカプトプリン(6MP)に分解された後,主にヌクレオチドのチオイノシン酸となり,これがプリン代謝の過程においてイノシン酸と拮抗して核酸合成を抑制し,リンパ球の増殖を阻止し免疫抑制作用をしめす.副作用は白血球減少,食欲不振,嘔気,肝障害,皮疹,脱毛,心悸亢進などである.投与方法は単独またはステロイド剤との併用が行われている.投与量は文献では50〜200mg/日12)29)である.血液検査を十分に行い,白血球数が持続的または急速に低下した場合は減量または中止する.
3) シクロホスファミド(cyclophosphamide)
 薬理作用は生体内でnitrogen mustard が遊離して細胞毒性を示す.副作用としては骨髄障害,腎障害,出血性膀胱炎,肝障害,過敏症,消化器症状,発癌性等がある.使用量は経口で50〜150mg/日,静注で500〜2000mg/2週と報告12)29)されている. そ の 他 ク ロ ロ キ ン や ヒ ド ロ キ シ ク ロ ロ キ ン(hydroxychloroquine)などが報告30)40)されているが今回は省略する.表2はStatement on Sarcoidosis 12) に記載されたもので,参考に示す.

IV. サルコイドーシスの臨床経過と基本的な治療適応の関係

 サルコイドーシスは臨床的に多様性に富んだ病像と経過を示す.そのために治療にあたっては下記の病像を考慮し治療適応を決めることが有用と考えられる.

1)急性サルコイドーシス:突然に発熱,関節痛,唾液腺腫脹,結節性紅斑,ぶどう膜炎,などを示し発病する症例を一般にいう.治療は通常は非ステロイド系の消炎剤でコントロールするが,有効でない場合は短期間のステロイド剤の治療を行う.

2)高度の臓器機能障害を初診時から示し,日常生活の質(quality of life:QOL)に支障をきたす症例や,生命の予後が危ぶまれる症例はステロイド剤の全身投与の対象となる.3)難治性サルコイドーシス:ステロイド剤の全身投与に関わらず,治療困難な症例またはステロイド剤の離脱が困難な症例は,細胞毒性薬の単独投与かステロイド剤との併用を考慮する.

V. 治療終了 中止の判定

 治療前に認められた自覚症状,画像所見,検査所見,臓器障害の改善または安定化が認められ,維持量(プレドニゾロン5-10mg/日)に減量後3〜6カ月の経過観察で再燃が認められない時は終了してもよいが再発もありうる.また重大な有害事象が出現した場合は速やかに減量し中止する.ステロイド剤の減量に際し,一般にプレドニゾロン15mg/ 日になった時期は再燃が多いので特に注意して減量することが望ましい11)

表 1 経口ステロイド剤投与の効果(%)

表 2 サルコイドーシスに対するステロイド代替療法

各論

T 肺サルコイドーシスの治療

1. 治療方針

 肺サルコイドーシスにおいては,自覚症状,呼吸機能障害,画像所見の悪化について判断し,これらが無いか軽度の場合には原則として経口ステロイド剤は投与しない.血清Angiotensin Converting Enzyme(ACE) 活性,67Ga シンチグラム所見,気管支肺胞洗浄液所見はステロイド剤投与開始の直接の指標にはならない.

2. ステロイド剤全身投与の適応

1) stage Tで,重大な肺外病変のない場合,リンパ節腫大の悪化,持続のみでは経口ステロイド剤投与の適応にはならない.

2) サルコイドーシス肺病変(stageU,V)による自覚症状(とくに息切れと咳)が強い場合にはステロイド剤投与の適応となる.ただし,胸部エックス線像で肺野の粒状影や綿花状陰影が主体で,症状が咳嗽のみの場合には,その多くはステロイド剤を投与せずとも軽快する.

3) サルコイドーシス肺病変(stage U,V)によって明らかな呼吸機能障害をきたしている場合にはステロイド剤投与の適応となる.

4) 画像所見の悪化とともに自覚症状(とくに息切れ)が増強している場合や,呼吸機能障害の程度が悪化しつつある場合にはステロイド剤の投与を考慮する.

5) 自覚症状や呼吸機能障害の程度が軽く,画像所見のみが悪化する場合は,ステロイド剤の投与は慎重に行う.胸部エックス線像で肺野の粒状影や綿花状陰影のみの増強は無治療で改善することが多い.胸部CTでの太い気管支 血管周囲の肥厚,気管支の変形 拡張や無気肺の悪化(特に上葉において)が投与開始の指標となる.従って,ステロイド剤投与の前に胸部C T 撮影(HRCTを含む)を施行することが必要である.

3. 一般的な投与法

1) 一般的には,プレドニゾロン30mg/日 連日または60mg/ 日 隔日で開始して1カ月間継続する.

2) 4〜8週毎に5〜10mg/日 連日または10〜20mg/日 隔 日ずつ減量する.

3) 維持量は2.5〜5mg/日 連日または5〜10mg/日 隔日と する.全体の治療期間が1〜2年となった時点で終了し てみてもよい.

4) 再燃時の投与量および投与期間 再燃は維持量投与中,投与終了後6カ月以内に出現し易 く,再燃時には原則として初回投与量くらいまで増量 し,以後上記投与スケジュールで投与する.

4. その他の薬剤

 経口ステロイド剤に対して効果が少ないかまたは減量時 に悪化,再燃を繰り返す症例においては,他の免疫抑制剤 (methotrexate,azathioprine,cyclosporine A , cyclophosphamide,Chlorambucil など)の単独またはステ ロイド剤との併用投与を考慮する.

添付資料 1 肺サルコイドーシスの治療手順

U 心臓サルコイドーシスの治療

1. 治療方針

 サルコイドーシスの死因の3分の2以上は,本症の心病変 (心臓サルコイドーシス)による.従って心病変の存在はサ ルコイドーシスの予後を左右する要因と考えられている. 一般に早期の心病変にはステロイド剤が有効である.そこ で心臓サルコイドーシスの診断がなされた場合には,ステ ロイド剤治療を行う.なお各種病態に応じて一般的治療も 並行して行う必要がある.

2. ステロイド剤全身投与の適応

1) 房室ブロック 注1)

2) 心室頻拍などの重症心室不整脈 注2)

3) 局所壁運動異常あるいは心ポンプ機能の低下 注3)

3. 一般的な投与法

1) 初期投与量:プレドニゾロン換算で連日30mg/日または 隔日に60mg/日で内服投与.

2) 初期投与期間:4週間.

3) 減量:2〜4週間毎に,プレドニゾロン換算で連日5mg/ 日または隔日に10mg/日ずつ減量.

4) 維持量:プレドニゾロン換算で連日5〜10mg/日または 隔日に10〜20mg/日投与.

5) 維持量の投与期間:いずれ終了することが望ましいが, 他臓器と異なり終了が難しい場合が多い. 注4)

6) 再燃:初期投与量を投与する.
注1) 高度房室ブロックおよび完全房室ブロックでは, ステロイド剤を投与するとともに,恒久的ペース メーカの植込みを考慮する.
注2) 心室期外収縮,心室頻拍がステロイド剤治療によ り全て消失することは稀であり,抗不整脈薬の併 用を試みる.これらの治療にもかかわらず,持続 性心室頻拍などが認められる場合には,植込み型 除細動器やカテーテルアブレーションの適応となる.
注3) β 遮断薬は左室収縮機能不全に有用であるが,心 不全や伝導障害を悪化させることがあるので慎重 に用いる.
注4) ステロイド剤の重大な副作用で継続投与が困難な 場合には,メトトレキサート5〜7.5mg/週の投与も 試みられている.しかし心病変に対する本剤の使 用経験は少なく,その有用性も十分には明らかに されていない.

4. ステロイド剤の効能

1) 房室ブロックでは,伝導障害が改善し正常化する例も 見られる.

2) 収縮能は改善するまでには至らないが,心収縮はそれ 以上悪化しない例が多い.
(ステロイド剤治療を行わない場合は,一般的に収縮能 は次第に悪化する.)

5. 注意事項

1) ステロイド剤の一般的な副作用.

2) 投与後,まれに心室頻拍が出現あるいは悪化する例が 存在する.

3) 投与後,まれに心室瘤を形成する例が存在する.

添付資料2 心臓サルコイドーシスの治療手順

V 眼サルコイドーシスの治療

1. 治療方針

 原則としてステロイド剤局所投与(眼球周囲注射を含む)と散瞳薬で治療する.2に述べる病変にはステロイド剤の全身投与を行う.

2. ステロイド剤全身投与の適応

 以下のような活動性病変があり,視機能障害のおそれのある場合.
  • 1) 局所治療に抵抗する重篤な前眼部炎症重症の虹彩毛様体炎,隅角または虹彩結節が大きく多数,あるいは虹彩上に新生血管を伴う場合
  • 2) 高度の硝子体混濁
  • 3) 広範な滲出性網脈絡膜炎および網膜血管炎
  • 4) 網膜無血管領域を伴わない網膜あるいは視神経乳頭新生血管
  • 5) 黄斑浮腫
  • 6) 視神経乳頭の浮腫,肉芽腫
  • 7) 脈絡膜肉芽腫

3. 一般的な投与法

  • 1) 第一選択薬はプレドニゾロンの経口投与
  • 2) 初期投与量は 30-40mg/ 日 連日,重症の場合は 60mg/日 連日
  • 3) 初期投与量の投与期間は2週間から1カ月
  • 4) 1〜2カ月毎に5〜10mgずつ減量
  • 5) 最終投与量を2.5〜5mg/日相当とし,1〜数カ月続けて終了する.
  • 6) 全投与期間は3カ月から1年以上
    減量は病勢をみて慎重に行う.投与終了にあたっては,活動性眼病変の沈静化とともに,全身検査データに留意する

4. 治療効果の判定

  • 1) 視力,その他をふくむ視機能の改善
  • 2) 眼内病変の改善 沈静化 消失

5. その他

 ステロイド剤の副作用に注意する.ステロイド剤に抵抗 し,長期投与が必要な難治例がある.ステロイド剤以外の 免疫抑制剤およびその併用療法,硝子体手術の有効性につ いては,現在一定の評価がない.種々の眼合併症について は適切な治療を行う.

添付資料3 眼サルコイドーシスの治療手順

W 心,眼以外のサルコイドーシス肺外病変の治療

1. ステロイド剤全身投与の適応

  • 1) 神経病変
    • a) 著明な自他覚症状,画像所見異常,機能障害を伴う脳 脊髄病変
    • b) 著明な自他覚症状を伴う末梢神経病変
  • 2) 電解質異常,内分泌異常:高Ca血症,高Ca尿症,尿崩症
  • 3) 皮膚病変:殊にLupus pernio型皮膚病変及び美容上問題となる皮膚病変
  • 4) 上気道病変:症状の著明な鼻粘膜,喉頭,声帯病変
  • 5) 中等度〜高度胸水貯留を伴う胸膜病変
  • 6) 腹部病変:
    • a) 著明な自他覚症状,画像所見異常,機能障害を伴う肝,脾,腎病変
    • b) 著明な自他覚症状を伴う胃 腸病変
    • c) 周辺臓器圧排の危険性のある,増大する腹腔内リンパ節病変
  • 7) 運動器病変:著明な自他覚症状,画像所見異常,機能障害を伴う骨病変,関節病変,あるいは筋痛,運動障害,筋炎症状を伴う筋肉病変

2. 一般的な投与法

1) 脳 脊髄病変:プレドニゾロン30〜40mg/日 連日また は60〜80mg/日 隔日投与で開始し,漸減して6カ月後 15〜20mg/日 連日または30〜40mg/日 隔日投与まで 減量し,更に2年間継続投与し病状が安定した後,5mg/ 日ごとに減量して投与終了まで4〜5年は必要.症例に よっては更に長期投与が必要となる.重症例では60mg/ 日 連日またはステロイド剤パルス投与で開始し,上 記投与法へ移行する.

2) 高度の高Ca血症を伴う腎不全:高Ca尿症に対してステ ロイド剤治療にカルシトニン注射を併用する.ステロ イド剤の治療方法は1)に準ずる.

3) 尿崩症を伴う下垂体病変:尿崩症に対してステロイド 剤治療にデスモプレッシン点鼻投与を併用する.ステ ロイド剤の治療方法は1)に準ずる.

4) 腹部病変:内視鏡所見,生検陽性のみの胃病変はまず 経過観察し,自然改善するのを期待する.

5) 運動器病変:腫瘤形成のみの筋病変は先ず経過観察し, 自然改善するのを期待する.

3. その他

1) 再燃は維持量投与中,投与終了後に出現しやすく,再 燃時には初回投与量まで増量し,以後上記のスケジュールで治療する.

2) ステロイド治療困難な場合,他の免疫抑制剤の単独投 与またはステロイド剤との併用投与を考慮する.

改訂までの作業手順

 サルコイドーシスの治療に関する見解-2003では,現在我 が国で治療に携わっている医師(主に日本サルコイドーシ ス/ 肉芽腫性疾患学会の会員)に治療症例のケースカード (166例の治療症例/1600症例の全サルコイドーシス症例)の 提出を依頼すると共にサルコイドーシス治療に関する基本 的考え方のアンケート調査を行った.また,その結果出来 上がった主要臓器(肺,心,眼)に関する治療見解(草案) は日本呼吸器学会,日本心臓病学会,日本眼科学会にお願 いして各学会内にサルコイドーシス治療ガイドライン策定 専門部会(呼吸器部会,心臓部会,眼科部会)を設立する ように依頼し,専門的立場より草案の検討をして頂いた後 に,最終的にサルコイドーシス治療に関する見解-2003が作 成された.各種委員会の委員については後に一括して示す.

委員会(サルコイドーシス治療ガイドライン策定委員会)の構成

1. 基本問題検討部会(日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会と厚生科学研究特定疾患対策研究事業びまん性肺疾患研究班の合同)

  • 委員
    • 津田富康 大分医科大学医学部免疫アレルギー統御講座(内科学第三)
    • 山口哲生 JR東京総合病院呼吸器内科
    • 長井苑子 京都大学医学研究科呼吸器病態学
    • 森本紳一郎 藤田保健衛生大学医学部循環器内科
    • 大道光秀 前JR札幌鉄道病院呼吸器科
    • 岳中耐夫 熊本市民病院呼吸器科
    • 石原麻美 横浜市立大学医学部眼科
    • 立花暉夫 大阪簡易保険総合健診センター
    • 杉崎勝教 大分医科大学医学部免疫アレルギー統御講座(内科学第三)(事務局)

2. 治療ガイドライン策定専門部会

  • 1) 呼吸器部会(日本呼吸器学会)
  • 2) 循環器部会(日本心臓病学会)
  • 3) 眼科部会(日本眼科学会)
    • 1) 呼吸器部会
      • 日本呼吸器学会側委員
        • 阿部庄作 札幌医科大学第四内科
        • 山口悦郎 北海道大学医学部第一内科
        • 折津 愈 日赤医療センター呼吸器科
        • 菅 守隆 熊本大学医学部第一内科
      • 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会側委員
        • 津田富康 大分医科大学医学部内科学三
        • 山口哲生 JR東京総合病院内科
        • 長井苑子 京都大学医学研究科呼吸器病態学
      • 外部評価委員
        • 日本呼吸器学会理事
    • 2) 循環器部会
      • 日本心臓病学会側委員
        • 菱田 仁 藤田保健衛生大学医学部循環器内科
        • 鈴木 忠 群馬大学医学部保健学科
        • 和泉 徹 北里大学医学部内科
        • 後藤紘司 岐阜大学保健管理センター
        • 松森 昭 京都大学医学研究科臨床器官病態学
        • 広江道昭 国立国際医療センター循環器内科
        • 矢崎善一 信州大学医学部第一内科
      • 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会側委員
        • 森本紳一郎 藤田保健衛生大学医学部循環器内科
        • 平光伸也 藤田保健衛生大学医学部循環器内科
      • 外部評価委員
        • 中野 赳 三重大学第一内科
        • 百村 伸一 虎の門病院循環器センター内科
        • 本田 喬 済生会熊本病院循環器科
        • 大西 哲 NTT東日本関東病院循環器内科
    • 3) 眼科部会
      • 日本眼科学会側委員
        • 大野重昭 北海道大学医学部眼科
        • 小竹 聡 北海道大学医学部眼科
        • 臼井正彦 東京医科大学医学部眼科
        • 後藤 浩 東京医科大学医学部眼科
        • 望月 学 東京医科歯科大学医学部眼科
        • 沖波 聡 佐賀医科大学眼科
      • 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会側委員
        • 石原麻美 横浜市立大学医学部眼科
        • 大原國俊 日本医科大学医学部眼科

3. 厚生科学研究特定疾患対策研究事業びまん性肺疾患研究班

  • 工藤翔二 日本医科大学第4内科
  • 阿部庄作 札幌医科大学第3内科
  • 貫和敏博 東北大学加齢医学研究所
  • 杉山幸比古 自治医科大学呼吸器内科
  • 松島綱治 東京大学大学院医学系研究科分子予防医学教室
  • 中田紘一郎 虎の門病院呼吸器科
  • 吉澤靖之 東京医科歯科大学呼吸器科
  • 林 清二 大阪大学大学院医学系研究科分子病態内科学講座
  • 清水信義 岡山大学第二外科
  • 曽根三郎 徳島大学第3内科
  • 菅 守隆 熊本大学第一内科
  • 津田富康 大分医科大学免疫アレルギー統御講座(第3内科)
  • 伊藤春海 福井医科大学放射線科

文献

  • 1) 津田富康, 山口哲生, 長井苑子, 他 : サルコイドーシス治療ガイドライン策定-全国施設アンケート調査中間報告-.厚生科学研究特定疾患対策研究事業びまん性肺疾患研究班平成 11年度研究報告書 p141-145, 2000.
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