「間歇投与によるサルコイドーシスのステロイド治療」
―SARCOIDOSIS NEWS No.39より―
最近,学会News編集部よりサルコイドーシスのステロイド治療,殊に(short acting steroid)プレドニソロン間歇投与について,私が大阪大学第3内科内分泌グループと共に1970年代に開始し,当時の厚生省サルコイドーシス調査研究班会議でも報告した内容を解説する依頼がありました.
先ず始めに具体的な投与方式を述べます.プレドニソロン60mg隔日朝1回内服で2カ月,50mg隔日朝1回内服で2カ月,40mg隔日朝1回内服で2カ月,30mg隔日朝1回内服で6カ月,以上で1年.以後漸減して,25mg隔日朝1回内服で2カ月,20mg隔日朝1回内服で2カ月,15mg隔日朝1回内服で2カ月,10mg隔日朝1回内服で2カ月,5mg隔日朝1回内服で2カ月,以上で全投与期間約1.5乃至2年間投与する方式です.1982年厚生省肉芽腫性肺疾患研究班サルコイドーシスのステロイド治療に関する見解の中でも,ステロイド剤の投与量と方法の項目で<プレドニソロン30mg/日を連日あるいは60mg/日を隔日投与方法で開始する.全投与期間は症例により異なるが最低1年6カ月以上必要である.>と記載されています.隔日投与時,朝1回内服の理由は,副腎皮質ホルモンの内的分泌が毎朝にmaximumになるという人間時計の分泌リズムを乱さないためです1).
1970年代は種々の疾患について,ステロイド間歇投与が試みられた時期で大阪大学第3内科内分泌グループでステロイド投与の副作用を研究していて,ステロイドの中でshort acting steroid間歇投与は,long acting steroid (betamethasone他)連日あるいは間歇投与およびshort acting steroid (prednisolone)連日投与に比してrapid ACTH test他の検討で潜在性副腎不全が少なく副作用の点で後者の投与方法が優れている事をサルコイドーシスを含む種々の疾患患者で確認しました1).当時サルコイドーシス症例にステロイド投与する際は,一般にlong acting steroid( betamethasone)連日投与が実施され,3カ月も投与すると殆ど全例著明なmoon faceを呈し投与を中止していました.然し,上記short acting steroid間歇投与方法では,moon faceも低頻度,かつ軽度でした.そこで,当時私は,ステロイド投与するサルコイドーシス全例にこの投与方法を実施し2)(現在も継続していますが)副作用が少なく,治療開始後1,2,3年後の胸部レ線所見改善率も良好であることを,厚生省サルコイドーシス調査研究班3)および肉芽腫性肺疾患調査研究班班会議4)で報告しました.その後厚生省サルコイドーシス研究班の班研究でもprednisolone 60mg/日隔日より漸減する方法で全国レベルで検討が実施されました.但し当時は,軽症例が非ステロイド,重症例がステロイド投与の傾向があり,short acting steroid間歇投与肺サ全国症例の治療開始1,2年後の胸部レ線所見改善率については,ステロイド投与群,非投与対照群間で有意差を認めませんでした.副作用については,moon face, acne 以外のmajorなものはなしでした5).
さて,ステロイド治療の絶対的適応は,心サルコイドーシス病変,中枢神経系サルコイドーシス病変です.最近(1991-1993年5) 1994-1996年)の全国剖検例調査成績(立花他)でも,心サ病変は,サルコイドーシスによる死亡の最多原因であり,サルコイドーシスの生命予後上最も重要です.心サのステロイド治療6)
7)の際も,我々は上述の投与方法を用いて,減量してprednisolone10mg/日乃至15mg/日隔日を維持量として,年余にわたって長期投与しています.一部症例では,30mg/日連日投与で開始して,漸減,隔日投与に切り替え,維持量を長期投与しています6).中枢神経系サルコイドーシスのステロイド治療の際も同様です.心,中枢神経系サルコイドーシス病変の他に,自験例で,呼吸器症状著明な肺サ症例,網膜病変著明な眼サ病変なども投与期間は,心,中枢神経系病変ほど長期でなくても,上記の間歇投与を実施して副作用なく治療目的を果たしています.間歇投与全症例の副作用について,現在まで我々の多数例の経験では,上記投与方法は,moon faceを一部の症例に軽度認めたのみで,年余にわたる維持量長期投与も可能でした.
以上,サルコイドーシスのステロイド治療,殊に,short acting steroid間歇投与の実際を述べました.
文献;
1)森本靖彦他:日内会誌67;57-68, 1978
2)立花暉夫:サルコイドーシスの治療とくにステロイド治療,臨床科学16;1013-1017,1980
3)立花暉夫,森本靖彦:隔日一回投与によるサルコイドーシスのステロイド治療,昭和51年度厚生省サルコイドーシス調査研究班研究報告248-255, 1978
4)立花暉夫,森本靖彦他:隔日朝1回プレドニゾロンによるサルコイドーシスの治療,昭和54年度厚生省肉芽腫性肺疾患調査研究班研究報告282-284-1017,1980
5)Tachibana,T et al:Control Trial of Corticosteroid Therapy in
Japan Sarcoidosis, R.Mikami,Y.Hosoda Ed. Tokyo Univ. Press 280-285,1980
6)立花暉夫,大森文夫他:サルコイドーシス心病変のステロイド治療に関する臨床的研究,日本サルコイドーシス学会誌12;83-84, 1993
7)大森文夫,立花暉夫:サルコイドーシスのステロイド治療の適応.心サルコイドーシス,日本臨床62;1648-1653,1994.
―SARCOIDOSIS NEWS No.39より―
大阪簡易保険総合検診センター大阪府立病院 立花暉夫
最近,学会News編集部よりサルコイドーシスのステロイド治療,殊に(short acting steroid)プレドニソロン間歇投与について,私が大阪大学第3内科内分泌グループと共に1970年代に開始し,当時の厚生省サルコイドーシス調査研究班会議でも報告した内容を解説する依頼がありました.
先ず始めに具体的な投与方式を述べます.プレドニソロン60mg隔日朝1回内服で2カ月,50mg隔日朝1回内服で2カ月,40mg隔日朝1回内服で2カ月,30mg隔日朝1回内服で6カ月,以上で1年.以後漸減して,25mg隔日朝1回内服で2カ月,20mg隔日朝1回内服で2カ月,15mg隔日朝1回内服で2カ月,10mg隔日朝1回内服で2カ月,5mg隔日朝1回内服で2カ月,以上で全投与期間約1.5乃至2年間投与する方式です.1982年厚生省肉芽腫性肺疾患研究班サルコイドーシスのステロイド治療に関する見解の中でも,ステロイド剤の投与量と方法の項目で<プレドニソロン30mg/日を連日あるいは60mg/日を隔日投与方法で開始する.全投与期間は症例により異なるが最低1年6カ月以上必要である.>と記載されています.隔日投与時,朝1回内服の理由は,副腎皮質ホルモンの内的分泌が毎朝にmaximumになるという人間時計の分泌リズムを乱さないためです1).
1970年代は種々の疾患について,ステロイド間歇投与が試みられた時期で大阪大学第3内科内分泌グループでステロイド投与の副作用を研究していて,ステロイドの中でshort acting steroid間歇投与は,long acting steroid (betamethasone他)連日あるいは間歇投与およびshort acting steroid (prednisolone)連日投与に比してrapid ACTH test他の検討で潜在性副腎不全が少なく副作用の点で後者の投与方法が優れている事をサルコイドーシスを含む種々の疾患患者で確認しました1).当時サルコイドーシス症例にステロイド投与する際は,一般にlong acting steroid( betamethasone)連日投与が実施され,3カ月も投与すると殆ど全例著明なmoon faceを呈し投与を中止していました.然し,上記short acting steroid間歇投与方法では,moon faceも低頻度,かつ軽度でした.そこで,当時私は,ステロイド投与するサルコイドーシス全例にこの投与方法を実施し2)(現在も継続していますが)副作用が少なく,治療開始後1,2,3年後の胸部レ線所見改善率も良好であることを,厚生省サルコイドーシス調査研究班3)および肉芽腫性肺疾患調査研究班班会議4)で報告しました.その後厚生省サルコイドーシス研究班の班研究でもprednisolone 60mg/日隔日より漸減する方法で全国レベルで検討が実施されました.但し当時は,軽症例が非ステロイド,重症例がステロイド投与の傾向があり,short acting steroid間歇投与肺サ全国症例の治療開始1,2年後の胸部レ線所見改善率については,ステロイド投与群,非投与対照群間で有意差を認めませんでした.副作用については,moon face, acne 以外のmajorなものはなしでした5).
さて,ステロイド治療の絶対的適応は,心サルコイドーシス病変,中枢神経系サルコイドーシス病変です.最近(1991-1993年5) 1994-1996年)の全国剖検例調査成績(立花他)でも,心サ病変は,サルコイドーシスによる死亡の最多原因であり,サルコイドーシスの生命予後上最も重要です.心サのステロイド治療6)
7)の際も,我々は上述の投与方法を用いて,減量してprednisolone10mg/日乃至15mg/日隔日を維持量として,年余にわたって長期投与しています.一部症例では,30mg/日連日投与で開始して,漸減,隔日投与に切り替え,維持量を長期投与しています6).中枢神経系サルコイドーシスのステロイド治療の際も同様です.心,中枢神経系サルコイドーシス病変の他に,自験例で,呼吸器症状著明な肺サ症例,網膜病変著明な眼サ病変なども投与期間は,心,中枢神経系病変ほど長期でなくても,上記の間歇投与を実施して副作用なく治療目的を果たしています.間歇投与全症例の副作用について,現在まで我々の多数例の経験では,上記投与方法は,moon faceを一部の症例に軽度認めたのみで,年余にわたる維持量長期投与も可能でした.
以上,サルコイドーシスのステロイド治療,殊に,short acting steroid間歇投与の実際を述べました.
文献;
1)森本靖彦他:日内会誌67;57-68, 1978
2)立花暉夫:サルコイドーシスの治療とくにステロイド治療,臨床科学16;1013-1017,1980
3)立花暉夫,森本靖彦:隔日一回投与によるサルコイドーシスのステロイド治療,昭和51年度厚生省サルコイドーシス調査研究班研究報告248-255, 1978
4)立花暉夫,森本靖彦他:隔日朝1回プレドニゾロンによるサルコイドーシスの治療,昭和54年度厚生省肉芽腫性肺疾患調査研究班研究報告282-284-1017,1980
5)Tachibana,T et al:Control Trial of Corticosteroid Therapy in
Japan Sarcoidosis, R.Mikami,Y.Hosoda Ed. Tokyo Univ. Press 280-285,1980
6)立花暉夫,大森文夫他:サルコイドーシス心病変のステロイド治療に関する臨床的研究,日本サルコイドーシス学会誌12;83-84, 1993
7)大森文夫,立花暉夫:サルコイドーシスのステロイド治療の適応.心サルコイドーシス,日本臨床62;1648-1653,1994.
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